毒を飲むにはちょうど良い時間

数か月前に重い風邪を引いた。病気の間はそれでなくとも気が弱るというのに、仕事に追われていた僕は数日の休養に作業時間を奪われたことにより、穏やかに昼から睡眠を取るという気分ではなかった。目を閉じればあのくだらないソースコードが鮮やかに目に浮…

嫌いな物がありすぎる話

嫌いな作品がある。列挙すればいくら書いても足りないぐらいの数になると思う。必要があればそれを表明もするので、仲の良かった人からも疎ましがられて関わりがなくなったりも良くする。 それでも嫌いな作品のことが本当に大嫌いだ。 そのうち話題性のある…

残機と私

シューティングゲームでは、不慮の事故を乗り切るにあたっての呪術的な思い切りのため、あるいは乗り切れないと判っていた時の奥の手として、ボムと残機を貯めてそこを乗り切る判断が必要になる。 現実を生きる上で、僕たちは大抵の場合、墜落後にその残機を…

それから一年が経った

どうしていたかと訊かれたら生きていたと答える。 たかが日記を書くことへ抵抗を感じてしまい一度離れることを決めてから一年になる。復帰しようと思っているが上手くいくかはわからない。 今日のエントリは日記を書くということについて。 当初のエントリに…

女職人の不誠実な正義

この空白の一週間をどう釈明するか迷う。 以前に確か、「こんなに嬉しかったことを書いて疎まれないだろうか」と書いたことがあったが、この一週間何をしていたのかと言えば、人には言えないほどに嫌なことばかりがあった。嫌なことを書くという行為に対し、…

銃声響かず

エフの補修に執心した日だった。彼は使用者はおろか、修正を行う担当に対しても「何がどう動いているのかは分からないが、とにかく素早く動く」ものを提供することに突出した職人だ。あなたもまた、死の反復横跳びの一件で忘れられないほどの悪夢を目の当た…

真夜中への麻痺について

23時まで残業だった。理由は例の名古屋の工場の、実際の情報を古い仕組みから取得する作業でだ。【ユル】は検証担当であるからと、一切手を貸さなかった。だがこれはそもそも開発側でも修正側でも検証側でも、本来の担当などいない作業だった。さすがに集中…

伝播する呪詛

半年前の話になる。僕がかつて所属していた職人たちの課で、先輩の職人二人と訪問して仕組みの手入れをしていた、東京のはずれの家具屋があった。所属の課が変わった今はその家具屋は僕の担当であり、先輩たちが残した功績と、負債を一身に背負っているとい…

古代都市埼玉と尊大さについて

空は暗い。朝六時、まだ寒く桜は三分咲きといったところで僕は覚悟を決めていた。他でもない、今日は多くの企業に新入社員が入社する日だ。何の覚悟かって、それは交通機関が混乱することへの覚悟だ。 専門外に口を出した機構士のお陰で月曜の起床が五時半と…

何に向かって走るというのか

職人となる前の話をするのも若者ぶっているようで抵抗があるが、これも日記だからそういうことも書く。未だに僕を舞台に立たせてくれる友人との練習の話で、こんなことを話しても誰が得をするのかわからない内容だ。僕の趣味は楽器演奏だ。 彼はライブの企画…

劇場とポンコツの身体

特に書くことがない日、という日は日記を書く時に定期的に訪れる。書くべきことがないわけではなく、書くべきではないのではないかと悩む日だ。 考古学者兼職人の日記を書くのはそれほど負担がないものの、例えばこんなに美味しいものを食べたいい日だっただ…

呪われたコーデックスと除霊

一つ、職人としての知を共有しなければ今日の日記は綴ることができない。コーデックスは大きく二つに分けられる。一つは、人間が見えるもの。もう一つは見えないもの。たとえば材料を量る指示を表示するものと、その裏で材料を量ったというエーテルを受け取…

失われた「行きつけ」と、この街のイタリアン

工房へと毎日通う職人に取って、昼食の時間は重要だ。同僚の職人たちの中には、安く冷めた弁当を口に運びながら昼休みの間も手を動かす者も少なくないにせよ、僕に取っては優先順位がきわめて高い。 少し前まではエンジェルフェイクという洋食店が工房の近く…

悪しき賢者、【フェオ】

名古屋には昔偉大な職人が住んでいたと聞いたことがある。僕の所属する会社の水準をはるかに超えるコーデックスを記し、数多のコーデックスに流用させた、偉人である。 が、考古学者かつ職人たる僕の見解は違う。 皆考古学者ではなく職人のため、信じて疑わ…

考古学者として

埼玉にある工場では色んな不思議な粉を混ぜ、加水して練り、ゴムとか、ゴムじゃないものにするなり、あるいはゴムの手前で出荷している。 僕を雇った会社は、その工場のシステムを手がけている。作業をする人が、この粉を何キロ、そしてこの粉を何グラムと測…

はじめに

日々あったことが、あまり公に話すようなことでもなかったり、それほど面白いこともないので、書くことがあまりありません。よろしくお願いします。